「1on1(ワンオンワン)」は人材開発・組織開発の出発点である

「1on1(ワンオンワン)」は人材開発・組織開発の出発点である

1on1(ワンオンワン)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

「3on3(スリーオンスリー・3対3でやるバスケットボール)」のような名前だがスポーツではない。

1on1」とは、会社で行われる上司と部下の1対1の対話の時間のことだ。

「なんだ、面談のことか」と侮るなかれ。「1on1」は、進捗確認や評価のためのいわゆる面談とはまったく異なる、現在注目の人材開発アプローチの1つだ。

「1on1」の発祥は、アメリカのスタートアップ界隈とされる。日本でもIT企業を中心に導入が進んでいるが、中でもインターネットサービス大手のヤフーの事例が有名だ。

「ヤフーの1on1」という本も出ている。

ヤフーにおける1on1とは「週に1回程度、30分程度行われる上司と部下の対話のことだ。

若手やチームに来たばかりの人は、毎日数分行うこともあれば、ベテランは隔週にするなど調整が入ることもあるが、基本は週に1回程度、30分程度が目安になる。

1on1は上司のための時間ではなく、部下のための時間として設定される。そのため話すテーマも部下が決める。

短期的な進捗確認や目標管理だけでなく、中長期的なキャリアデザインや、気軽な世間話など、実に幅広い。

ヤフーで1on1を実施する目的は大きく2つ。

1つは「社員の経験学習を促進する」ため。そして、もう1つは「社員の才能と情熱を解き放つ」ためだという。

経験学習」とは、仕事経験を学びに変えて成長をうながす人材開発のアプローチだ。

経験を学びに変えるためには、経験したことをそのままにせず、振り返る(内省する)必要がある。1on1はこの振り返り内省)」を実施する場として機能する。

「才能と情熱を解き放つ」というのは、能力やパッションを発揮しまくって働く人を増やす、という人材開発ポリシーのことだ。

そのためには社員一人ひとりが、自分らしい仕事や働き方(いわゆるキャリア)について考える必要がある。1on1はこうした今後のキャリアについて話し合われる場としても機能する。

1on1には「基本の型」がある。

  1. 話すテーマを部下が決める(今日は何を話そうか)
  2. 部下が話し、上司は傾聴する(もう少し詳しく話して)
  3. 上司が質問し、部下が次の行動を決める(次はどうしようか)
  4. 上司が支援を申し出る(手伝えることはあるかな)

という手順だ。

文字で書くとわざとらしく見えるが、30分間をこのおおまかな流れで進めることで効果的な1on1が成立しやすくなる。

そして、この「1on1の基本形」を成立させるために必要になるのが、コーチング」「ティーチング」「フィードバックという3つのコミュニケーションスキルだ。

コーチング」とは、傾聴・質問・承認を通して相手の中にある答えを引き出す行為だ。

相手の話をよく聴き(傾聴)、効果的に問いを投げ(質問)、相手の考え方や存在を認めることで(承認)、相手が自力で答えを見つけ出すためのサポートをする。1on1において、中心的な役割を果たす技術だ。

そして「ティーチング」は、相手が知らない知識や情報を教える行為だ。

誰がどう考えても正しいことや、知らないだけで困っていることがあれば、いち早く正確に教えてあげることが重になる。昨今はコーチングに押されて悪者のように扱われることが増えているが、業務上、最も基本的なコミュニケーションスキルであり、1on1においても活用される。

最後に「フィードバック」は、耳が痛い事実を伝えて、自発的な行動をうながす行為だ。

相手の行動が周囲にどう見えているかを伝えてあげることで、本人が見えていない自分の姿を見てもらったり、本人が気づいていない自分の状態に気づいてもらうことで、成長を支援するスキルだ。フィードバックと聴くと期末評価のフィードバックを思う人が多いが、1on1においては日常的にフィードバックが行われる。

この3つのスキルを用いることで、1on1は効果的な人材開発のアプローチになっていく。

そして、1on1は人材開発だけでなく、組織開発組織マネジメントにおいても有効なツールとなる。

部下がそれほど多くない場合は、効果的な1on1を通してチームビルディングを行うことができる。

1on1で1人1人の特性を知り、業務状況をつぶさに観察しながら、目指すビジョンを伝えることで方向性を合わせつつ、必要に応じて部下同士の関わり合いも促すことで、チームをマネジメントすることができる。

また部下が増えた場合は、チームの中をプロジェクトや領域で分けて、その責任者と1on1を行い、プロジェクト内のメンバーとの1on1はその責任者に任せるなどの工夫で、組織マネジメントが可能になる。

いずれにしても、一人ひとりの人に真摯に向き合う1on1というツールを活かすことで、人材開発にも組織開発にも繋げることができるし、逆を言えば、一人ひとりに向き合うことなく、人材開発も組織開発も実現はしないともいえる。

その意味では、1on1は人材開発・組織開発の出発点であると同時にゴールでもあるのかも知れないと思った。

 

それでは、また。

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