【経験学習モデル】「経験」こそ大人の学びの「一丁目一番地」である

【経験学習モデル】「経験」こそ大人の学びの「一丁目一番地」である

大人の学びは「7:2:1」

「7:2:1」という数字を見たことがあるだろうか。

これは「大人が何から学びを得るか」という比率を表していて、アメリカの研究機関により明らかにされたものだ。

大人になると、学習効果のうち7割は「仕事経験」から得ていて、2割は「他者のアドバイス」、そして1割が「読書や研修などのインプット」から得ているという。

人からアドバイスとして教えられたことも、研修や読書で学んだことももちろん重要、それ以上に「経験からの学び」が多いということを表している。

この原理を効果的に活用する人材開発のアプローチがある。

それが「経験学習モデル(サイクル)」だ。

コルブの「経験学習モデル(サイクル)」とは

経験学習モデル(サイクル)」とは、仕事の上の経験を学びに変えて、未来の仕事に活かす手法のことだ。

アメリカの組織行動学者デービッド・コルブが提唱したもので、「経験」「内省」「概念化」「試行」の4つのステップをグルグルを回し続けることが重要である、としている。

「経験」とは、「具体的な成功体験・失敗体験」のことだ。

経験を学びに変える経験学習において、すべてはこの「経験をする」「経験を積む」というアクションが出発点になる。経験学習において、経験そのものに良い・悪いはない。人は成功体験からも、失敗体験からも学ぶことができるからである。

内省」とは、「振り返り」のことだ。

経験したことを様々な視点で観察・分析し、今後に活かせる材料を探し出す作業である。内省の方法は「自問自答する」「人と対話する」という大きく2つの方法がある。経験をそのままにしてしまうか、学びに変えられるかの分岐点となるアクションであり、この内省の深さがそのまま経験学習の質を決定する。

「概念化」とは、「教訓を引き出す」ことをいう。

内省した結果をもとに、今回の経験からどんな「学び」や「気づき」を得ることができたか。成功体験からは今後も応用できることはないかを考え、失敗体験からは今後同じ失敗を繰り返さないようにするためにはどうしたらよいかを考え、それを持論化する。

「試行」とは、「教訓の実践」のことだ。

概念化・持論化された気づきを、実際に試してみる段階だ。経験からの学びを実践することによって、次の経験に繋げ、経験学習を「サイクル」として回す。

経験学習は、誰もが日常的・無意識的に行っているものだとも言える。

石につまづいて転べば「次からは気を付けよう」と思うだろうし、人の役に立って誰かに感謝されたら「また同じようなことをしよう」と考える。ある意味ではこれもまた経験学習だ。

ただ、人材開発における「経験学習」は、より解像度高く行われる。

具体的には成功体験からも「今後のリスクになりうる要素」を洗い出すし、逆に失敗体験からも「今後の成功の種になりそうな要素」を洗い出す。経験という「極上の素材」を、鮮度が高いうちに、余すところなくしゃぶり尽くすことが重要なポイントになる。

「経験学習サイクル」は一見、とてもシンプルなモデルだ。

本当に効果があるのかを疑う人もいるかもしれない。しかし、実際にこのサイクルを意識し始めると、これ以上に効果的な「大人の学び方」は他にはない、と実感するのではないだろうか。

「経験から学び続けること」が人と組織を強くする

僕の勤務先の会社でも「経験学習」を人材開発の軸に置いている。

「経験学習サイクル」を回すために、マネージャーが部下の「内省」を促す時間をとったり(1on1という手法)、社員がよりよい経験を積むために、次にどんな仕事を任せたらよいかを関係者で話し合う場を設けたりしている。

「経験学習」は、仕事の成果そのもので価値を生むだけで終わらせず、その仕事経験からの学びを次の仕事の成果に繋げることができるアプローチのため、ビジネスの観点からいっても、理にかなった取り組みだといえる。

「経験学習」のもう1つの効能は、挑戦したことがすべて資産に変わる点だ。「挑戦の先には成功と学びしかない」という言葉の通り、失敗を恐れることなく次の経験に向かっていくために有効な考え方だといえる。

また、近年は個人の経験学習だけでなく、組織の経験学習も注目されている。

個人と同じように、チームやプロジェクトといった組織単位で得られた仕事経験を、関係者全員で振り返り、気づきから教訓を得て、次の挑戦に向かっていくことで、組織全体の経験学習を回すことができる。

現代はVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代と言われる。

正解がわからない中でビジネス価値を生み出すためには、考え抜いてから行動に移すよりも、まず行動を起こしてから改善していく働き方が求められる。PDCA(Plan→Do→Check→Action)よりDCAP(Do→Check→Action→Plan)だ、なんて声も聞こえてくる。

そんな時代の考え方にも「経験学習」はピタリとハマる気がする。

個人もチームも学び続けることが重要な時代であり、何よりも日々の経験を学びに変えることこそが、変化し続けることが求められるこの時代に、確実にパフォーマンスを発揮するための有効なアプローチになると考えられるからである。

 

それでは、また。

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