【人材開発】「フィードバック」という「愛の剛速球」を投げつけよう

【人材開発】「フィードバック」という「愛の剛速球」を投げつけよう

「誰かの一言」が自分を変えることがある。

 

言った本人も忘れるくらい、何気ない一言の場合もあるし、自分のことを思って、渾身の思いを込めて言ってくれた一言の場合もある。

 

言われた瞬間に雷に打たれたようになる一言もある一方で、言われた瞬間はピンと来なくても、5年後、10年後になって、その言葉の意味がやけに思い出される一言がある。

 

いずれにしても、誰にでもそんな「誰かの一言」があるんじゃないかと思う。こんな「一言」を意図的に行う行為がある。それが「フィードバック」だ。

 

フィードバック」は人材開発における重要キーワードの1つになっている。

人材開発における「フィードバック」とは、本人が気づいていないこと、本人にとって耳が痛いことも含めて、「客観的に見えている事実」を伝えることで、本人が「主体的な改善行動」を起こすように働きかけるコミュニケーションスキルだ。

 

自分が知っていることを相手に教える「ティーチング」、質問や傾聴を通して相手の気づきを引き出す「コーチング」と三位一体で語られることも多い。

 

注目されているスキルなだけに、関連書籍も出ている。

「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」(中原淳・PHPビジネス新書)では、フィードバックとは「情報通知」と「立て直し」と説明されている。

 

【書評】「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」

 

フィードバックは「鏡」だ。

相手の「鏡」になって、見えていること、思っていることを率直に伝えることが出発点になるからだ。

 

自分がフィードバックをする側の場合は、自らが「鏡」として「見えている事実」を伝えることが重要で、そこには「評価」の要素を入れるべきではない。同時に、自分がフィードバックを受ける側の場合は、相手から見えている「その人にとっての真実」を素直に受け止めることが重要になる。

 

 

フィードバックは「宇宙ロケット」でもある。

宇宙ロケットが星を目指して飛んでいくとき、常に真っすぐに飛んで行けるわけではない。途中何度も、微妙に別の方向に向きそうになるのを「フィードバック機構」で補正し続けている。

 

人材開発におけるフィードバックも「目標地点」に向かってもらうことが目的だ。

それは「チームとしての成果」のこともあるし、「その人自身の成長後の姿」のこともある。

 

「言いたいことを言う」ことがフィードバックではなく、「目指す方向に向かってもらう」ことがフィードバックだ。少しズレたときには、少しだけフィードバックし、大きくズレそうなときには大きなフィードバックする。そして「星」を目指してもらう。

 

価値観の多様性が広がる現代において、人をマネジメントするという仕事は非常に高度な内容になってきていると思う。マネージャーに求められるマネジメントスキルも、目標管理や業務支援の範囲に留まらず、部下のスキルアップや、キャリア自律にも目を配る必要がある。

 

そのためにも、マネージャーはバッティングピッチャーになる必要がある。

バッターである部下にヒットやホームランを打ってもらうために、その時々に応じて配球を考え、良い球を投げ続ける仕事だからだ。

 

投げるべき主な球種は「コーチング」そして「フィードバック」だ。

質問をして引き出す「コーチング」が「変化球」(くさい球を投げる)だとすれば、事実を突きつける「フィードバック」は、さながら「直球ストレート球」(ど真ん中に投げ込む)だ。

 

投げ込まれた相手が打ち返せたら(受け止め切れたら)、ホームラン(人生を変えるような気づき)になり、打ち返せなくても(受け止められなくても)、ストライク(心にチクリと刺さるひと言)になる。

 

フィードバックには難しさもある。

フィードバックをすることの難しさだけでない。自分がしたフィードバックが正しかったかどうかを知るすべがないことだ。

 

相手がピンと来ないこともあるだけでなく、ただただ不愉快にさせて終わってしまうこともある。相手の心に響くことを言ったとしても、その意味を受け止めてもらえるのが5年後、10年後になることもある。その場合、相手からお礼を言われることは永遠にない。

 

見返りのない無償の行為が「愛」だとすれば、フィードバックもまた「愛」だ。

ヘタすれば、自分が嫌われて終わるかもしれないリスクを顧みず、相手の成長や、よりよい未来を思って投げ込まれる。フィードバックはそんな「愛の剛速球」なのだ。

 

良いフィードバックは時に人の人生を変える。

僕自身、過去に何度か雷に打たれたようなフィードバックがあった。その時はわからなくても、何年も経って、人生の指針になったフィードバックもあった。

 

そんなフィードバックがきっかけとなって、仕事を変えたり、働き方を変えたり、生き方を変えたりしてきた。

 

フィードバックとはつくづく難しいし、その分、面白いテーマだ。

特に日本人は空気を読む文化がある分、あまりズケズケとものを言わない傾向が強く、フィードバックが下手だと言われる。

 

でも今後のこの国にはフィードバックが必要だと思う。

人や組織や国が成長していくために、お互いが知っている「相手の事実」という貴重な情報を、常に交換し合える「フィードバック文化」を作ることが大事だと思っている。

 

そのためにもまずは自分自身、人に率直にフィードバックできる人間になりたい。

 

 

 

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