【本】「入門 組織開発」 (中村和彦著)を読んで <感想と要約メモ>

組織開発
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「入門 組織開発」を読みました


入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)

4月から組織活性を担当する部門に異動になりました

「よーし、組織活性するぞ~!」と盛り上がっているのはいいですが、「そもそも組織活性とは?」がわかっていない僕。

新しい上司が「読んでおくといいですよ」とこの本をおすすめしてくれました。

南山大学の中村和彦教授の著書で、タイトルどおり組織開発に関する入門書になっています。

組織開発の定義や、どんな手法や取り組み事例があるか、また現在の組織開発における課題について、非常にわかりやすく説明をしてくれています。

一部アカデミック(学術的)な内容もありますが、それも初心者がわかるように易しく書かれています。

まさに導入としてはうってつけで、僕と同じようにこれから組織開発に携わる人にとっては必読の一冊だと思います。

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特に勉強になった点の要約

本書を読んでこんなことを勉強になりました。

組織とは?組織開発とは?

組織は「意識的に調整された、人々の活動や諸力のシステム」と定義されています。

単なる集合体というよりも「お互いに作業し合う要素の複合体(=システム)」としてとらえることが大切とのことです。

また、組織開発は「組織の健全さ、効果性、自己革新性を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程」と定義されています。

もっと平たい言葉では「組織内の当事者が自らの組織を効果的にしていく(よくしてく)ことや、そのための支援」という表現も出てきます。

それを実現するために個人・個人間・グループ・グループ間・組織全体といったあらゆるレベルに働きかけていくこと、それを組織開発と呼ぶようです。

※組織開発はアメリカで発展してきた「Organization Development(OD)」の訳語です。

組織課題にはハードとソフトがある

組織課題には、ハード(形あるものや明文化されたもの)・ソフト(人間的な側面)2つの側面があり、その両方に取り組む必要があるとのことです。

  • ハードな側面・・「目的・戦略」「構造」「業務の手順・技術」「制度(施策)」
  • ソフトな側面・・「人(タレント)」「関係性」

コンテント」と「プロセス」という概念

組織開発でキーとなる概念。

話されている話題、起こっている課題、取り組まれている仕事といったWhatの側面をコンテントといい、どんな気持ちか、どんなコミュニケーションが行われているかといったHowの側面をプロセスといいます。

人は表面上起こっている結果(コンテント)に目が向きやすいですが、その裏側で起こっている関係性(プロセス)にこそ、課題の真因があることがほとんどみたいです。

実際の生産性=潜在的生産性-欠損プロセスに起因するロス

綱引きの例え。綱を引く力は1人より3人の方が大きくなりますが、単純に3倍にはならないそうです。

理由は、最終的に3人が発揮する力(実際の生産性)は、本来3人が持っている力の合計(潜在的生産性)から、以下のようなロスが差し引かれるからです。

  • 手を抜く人の存在
  • 綱を引くタイミングの違い
  • 綱を引く方向や角度の違い

このロス(プロセス・ロスという)こそが、現代における組織課題とのことです。

「リーダー養成型組織開発」と「パートナー型組織開発」

組織開発には大きく2つの進め方があり、組織開発を理解した強いリーダーが自部門の組織開発に取り組む「リーダー養成型」と、企業内の組織開発部門が内部ODコンサルタントとして支援を行う「パートナー型」がある。

マネジリアル・グリッド

管理者としてのマネージャーにどんなリーダーになってもらうことが望ましいか、組織がどんな状態になることが理想的かを明確にする評価の枠組み。

縦軸に「人に対する関心」をとり、横軸に「業績に対する関心」をとったマトリックス型のモデルで、その両方を高めて統合することの重要性を理解するために使われる。

データ・フィードバック

現状についてデータを収集し、データに基づいて現状を変革するアクションを計画する取り組み。

組織課題の当事者との合意のもと、アンケート調査や質問紙調査(サーベイ)を行い、結果を分析し、フィードバックし、アクション計画を立て実行に移していきます。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

他の組織開発アプローチが「問題解決型」であるのに対し、AIは強みや潜在力を引き出す「未来探究型」の組織開発アプローチとのこと。

※AIは「真価の探求」という意味。

強みや潜在力の発見(Discovery)、なりたい未来の共創(Dream)、あるべき状態の明確化(Design)、具体的な計画(Destiny)というステップを踏む(4Dサイクル)。

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何度でも読み返したいバイブル的な良書

組織開発の全体像を理解するのに最適な本で、どの内容も体感的に理解し、人にスムーズに説明できるように何度でも読み返したい良書だなと思いました。

また、本書は分かりやすいだけでなく、とても誠実な姿勢で書かれているとも感じました。特に印象に残ったのは「介入」という言葉についての説明部分です。

組織開発では、OD実践者が変革の対象(中略)に対して働きかけていくことを、アクションまたは「介入(intervention)」と呼んでいます。

介入という言葉は、(中略)力をもった外部者が無理やり入ってくるという状態を想起させます。(中略)

私はinterventionを「働きかけ」と訳した方が本来の意味に近いように感じています。

としながらも、

一方、「介入」という言葉が用いられてきたのは、それなりのあります。interventionの動詞interveneは(中略)、「調整する」「取りなす」という意味もあります。(中略)

という点や、

「介入」という言葉には、入る側の「覚悟」が込められていると強調しています。

という点も合わせて説明しながら、

「介入」か「働きかけ」か、またはほかの言葉か、ぴったりする言葉をこれからも探求し続けることにして、私はここ数年、「働きかけ」という言葉を使ってきましたので、本書でも「働きかけ」と表記したうえで、組織開発で用いられる手法を紹介していきます。

と結んでいます。

組織開発のキーワードになる部分だからとはいえ、言葉1つの扱い方の説明をこれだけ丁寧にしてくれているところに、著者のお人柄がよく表れているなと思いました。

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組織開発と自己分析の相似性について

本書を読んで一番感じたのは、組織開発と自己分析はとてもよく似ているテーマなんだなということです。

人も組織も他者から「変われ」と言われて変われるものではなく、自ら変わろうとすることが必要である点や、その人や組織が「何をするか」よりも、よりよい存在を目指すための「あり方(どういう人・組織の状態か)」が重要である点などが、とても似通っていると思いました。

改善に向けた手法やアプローチはたくさんあれど、何かをそのまま当てはめてうまくいった、いかなかったというものではなく、その人や組織の実情に合わせて個別にカスタマイズしていくことが重要な点もまた同様だと感じました。

本書を読み、これから自分が関わっていく仕事が奥深く、探求し、かつ実践し甲斐のある領域であることを再確認でき、とてもワクワクしています。

引き続き、人からの話や実際の経験と合わせて、こうした関連書籍からの体系的なインプットを得て、自分の仕事の質を引き上げていきたいと思います。

 

※本書で得た知識は用語集の方にも集約予定です。

 

それでは、また。

 

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