【映画】「永遠の0」感想(零戦と宮部久蔵が教えてくれたこと)

映画から学ぶ
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映画「永遠の0」から学んだことを記事にしました。

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悲劇の戦闘機と天才パイロットの物語

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映画「永遠の0」を観ました。言わずもがなの大ヒット小説の大ヒット映画化。映画の興行収入は85億円を突破、原作も映画化の影響もあって累計500万部を超えるベストセラーになっているそうです。

『永遠の0』、興収85億円突破!『セカチュー』を超える大ヒット ※Yahoo!ニュース

僕が本屋で原作本を見つけたときにはすでにベストセラーになっていました。「永遠のO(オー)ってなんやねん!あ、0(ゼロ)か」という感じで手にとって「へー零戦の話ね」と不思議なタイトルの付け方に妙に感心したのを憶えています。

その段階の自分にとって、零戦は太平洋戦争のときの日本軍の戦闘機で、日の丸がついていて、濃い緑のデザインで・・・くらいの知識しかないわりに、漠然としたカッコよさや憧れみたいな気持ちをを感じる飛行機でした。

本作(原作と映画)で強調されていたこと、それは「零戦はものすごく強かった」ということでした。

開戦当初は他を圧倒する強さで、諸外国に大変怖れられていたということです。その強さに魅かれると同時に、戦況が悪くなるにつれてその優位性が徐々に失われ、最後は特攻の道具として使われることになるという、その悲劇性に心を奪われました。

そして、主人公はその零戦のパイロット・宮部久蔵。家族に会うために生きて帰ることを信条にしているがゆえに、スゴ腕にも関わらず周囲からは臆病もの扱いされている。そんな、命を大事に思っている男に待っていたのは「特攻」という過酷な運命でした。

圧倒的な強さの戦闘機とスゴ腕パイロット。観客はその両方のドラマを軸に物語を追っていき、いつしか太平洋戦争そのものの過酷さ、渦中にいた人たちを巻き込んでいった運命を思い知らされることになります。

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主人公・宮部久蔵が教えてくれたこと

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主人公・宮部久蔵が教えてくれたこと。それは「どんな状況下でも1人の人間として当たり前に生きる」ことの強さです。宮部の信条である「何があっても家族のもとに戻る。そのために必ず今日を生き延びる」という考え方は太平洋戦争の最中にはとても特殊なものでした。

「帝国海軍一の臆病者」と揶揄された男は、実は自分の命を守るためにではなく、家族を守るために生き残ろうとしていた「勇気ある一人の人間」でした。周囲に何と言われても自分の信条に生きる、そんな生き方の極意みたいなものを教えてもらった気がします。

もうひとつ宮部が教えてくれたもの。それは「命は奪い合うものではなく、繋いでいくものである」という処し方です。

宮部久蔵に命の大切さを説かれたことで九死に一生を得た井崎源次郎は、久蔵の孫たちに素敵な物語を語り聞かせることで受けた恩を受け渡しました。

久蔵に身代りになってもらったことで命を救われた大石賢一郎は、その恩に報いるべく久蔵の妻・松乃と子・清子を守ることを決意します。

また、ある意味で久蔵に生きがいを与えてもらった景浦介山は、やはり戦後、松乃の命を助けたと思われる描写があります。

この構図、どこかで観たなぁ・・と思ったら、映画「ペイ・フォワード」でした。

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「ペイ・フォワード」はハーレイ・ジョエル・オスメント主演のヒューマンドラマで「もし世界を変えるとしたら何をするか?」という宿題を出された少年が「自分が受けた善意を他の3人の人に受け渡していく」というアイデアを思いつく、というストーリーです。

とても素敵な映画なのでぜひ観ていただきたいですが、このストーリーの骨格部分はまさに宮部が命を繋いでいったことと酷似しています。

宮部久蔵のすごさ。それは平和な現代日本においては当然の感覚を、戦時中という最もそうした感覚を保ちづらい状態で持ちつづけたところです。

「そんな人実際にはいないでしょ」「映画でしょ」と思ってしまいそうですが、映画を観た当時を知る人たちの中には「戦争中たしかにこういった男たちがいた」と証言している方もいるそうです。

なんだかリアリティがある話です。実際、太平洋戦争当時の日本人というのは、僕らが想像しているほど今の僕たちと違う感覚をもっていたわけじゃないんだと思います。

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ラスト1分40秒の特攻シーンは必見

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特攻で死ぬことを決意した宮部は、アメリカの空母に接近していきます。冒頭の映像をなぞりながら、新たに宮部の最後の勇姿も映すラストシーン。逃げずにしっかりと描いてくれたという印象です。

米海兵隊の最新兵器の弾幕を超低空飛行で避けながらあと少しのところまで迫って被弾。そこで一気に急上昇をし、空母の真上からの突撃を試みます。ここも原作と一緒で心が震えてしまいます。最後は久蔵のアップ。不敵な笑顔で終わり、タイトルバック。

原作を読んで最高に好きなシーンでしたが、そのかっこよさを完全に映像化してくれました。感無量です。

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太平洋戦争を学べる構成になっています

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本作は、太平洋戦争の入門編としても優れています。

前述した零戦の強さの話から始まって、日本兵の優秀さ、真珠湾攻撃の成功と失敗、ミッドウェー海戦での敗戦、ラバウル飛行隊の活躍、ガダルカナル島奪還作戦、そして終戦間際の特攻作戦。

孫たちは、祖父・宮部久蔵の影を追いかけなら、太平洋戦争の重要な局面をなぞっていきます。

個人に焦点をあてていることと、海軍(それも南方戦線)のことしか描いていないため、太平洋戦争の全てが盛り込まれているわけではないものの、日本軍の作戦の杜撰さや、戦況が悪化していく雰囲気をよく表現できていたと思います。

零戦の表現も素晴らしかったです。なんでも専門家が太鼓判を押す映像表現になっていたとか。日本製のプロダクトの素晴らしさが最後は外国のプロダクトに追い抜かれる様は、どこか日本の家電メーカーの現状と重なりました。

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キャスティングが素晴らしいです

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役者さんの好演が素晴らしかったです。観るまではちょっと心配だったV6岡田准一さん扮する宮部はまったく違和感がなかったし、脇を固めた田中泯さん、橋爪功さん、染谷将太さんなんかも素晴らしい演技で、全体的にナイスキャスティングでした。

なかでも出色だったのは、宮部の妻・松乃役の井上真央さんでした。ここに彼女を持ってくるのはズルいだろう!というくらい可憐な女性がハマりまくってました。あまりに素敵過ぎてファンになってしまったので、それだけで別記事を上げました。よろしければご覧ください。

【映画】 「永遠の0」 井上真央さん演じる 「松乃」 が可憐すぎる件

アホです。

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唯一残念だったところ

唯一残念だったのは、原作にあった人間爆弾「桜花」の描写がなかったところです。

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桜花 (航空機) ※Wikipediaより

「桜花」は爆弾に翼を付けただけの滑空しかできない飛行機で、まさに死ぬためだけに乗りこむ非人間的な兵器です。その訓練シーンも死者が多数出る過酷なもので、当時の日本軍の狂信ぶりを凝縮した非常に重要なシーンだと思っています。

それが映画では描かれていなかったので、そこが一番残念でした。あのシーンこそ、この大戦がいかに人の命を軽視した愚かさを秘めていたかを表す決定的な要素だったと思います。なんでしょうね、映画だと生生しすぎるからでしょうか。

映画しかご覧になっていない方は是非原作で、このシーンを読んでいただきたいです。本作の印象が少し変わるはずです。

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大切なのは「先の大戦」に思いをはせること

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「太平洋戦争」とはいったいどんな戦争だったのか。「先の大戦」とも呼ばれ、僕たちにとっては一番近い過去に起こったこの戦いは、イメージとしてはすでに隔世の感もあります。でも冷静に考えると実はたった70年前に起こったことなんですよね。

日本でも世界でもいろいろな評価がされている戦争のようです。

一方的な侵略戦争だとする意見や、諸外国による包囲網に対する自衛の戦いだったという意見。また、欧米による植民地主義に終止符を打ち、白人と有色人種の平等をもたらした戦いだったという意見などがあるそうです。(Wikipedia 太平洋戦争 より)

また、本作自体も評価は様々なようです。

宮崎駿「永遠の0」を嘘八百と批判!? 百田尚樹も「おこ」で零戦戦争勃発か

「今、零戦の映画企画があるらしいですけど、それは嘘八百を書いた架空戦記をもとにして、零戦の物語を作ろうとしているんです。神話の捏造をまだ続けようとしている。『零戦で誇りを持とう』とかね。それには僕は頭にきてたんです。子どものころからずーっと!」
「相変わらずバカがいっぱい出てきて、零戦がどうのこうのって幻影を撒き散らしたりね。戦艦大和もそうです。負けた戦争なのに」

J-CASTニュースより

これには原作者の百田尚樹氏もこんなコメントをしています。

「『永遠の0』はつくづく可哀想な作品と思う。文学好きからはラノベとバカにされ、軍事オタクからはパクリと言われ、右翼からは軍の上層部批判を怒られ、左翼からは戦争賛美と非難され、宮崎駿監督からは捏造となじられ、自虐思想の人たちからは、作者がネトウヨ認定される。まさに全方向から集中砲火」

戦争を描くというのはこういった非難を免れないものなのでしょう。もう1つ、こんな著名人も本作を批判しています。

映画「永遠の0」を痛烈批判した井筒監督 「見た後で自分の記憶から消したくなった」

「見たことを記憶から消したくなる映画」/「特攻隊を美談にしている」/主人公は「生きたい」と考えていたのに特攻隊に志願して戦闘機に乗り込む筋書きを不自然と感じ、「そんなわけない」と語気を強めた。

J-CASTニュースより

僕自身は知識不足もあり、恥ずかしながら自分の意見を持ち合わせてはいませんが、1つだけ言えることは、大切なのはこうした映画をきっかけに、風化させてはいけない記憶を何度でも呼び覚ますことだと思います。

事実として、そうした戦いがあって、多くの人が犠牲になった。それを漠然としたイメージではなく、具体的に1人1人の人生に起こった出来事として体感するためにも、こうした作品があるんだろうなと思います。

そう考えると、大石賢一郎が久蔵の孫、健太郎と慶子に言った「調べてほしい。お前たちのためにもな」というセリフは、僕たち観客に向けて言っているような気がしてきます。僕もこれを機会に「先の大戦」のことを、ちゃんと調べてみようと思います。

 

「永遠の0」、なんとドラマ化もするんですね。

テレ東50周年企画のラストを飾るのは、向井理主演「永遠の0」

原作者の百田尚樹氏も「映画版は原作者である私自身が大いに満足した出来栄えでしたが、もとが600ページ近い長編だけに、原作の世界観が十全に再現されたものではありませんでした。しかし、今回のテレビ東京の企画は、限りなく原作に近づいたものです。」と語っています。相当いい出来ばえになりそうということでしょうか。楽しみですね。

 

※松乃役・井上真央さんの魅力については別記事を書きました。

 

それでは、また。

 

 

 

 

 

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