キャリアに悩んだら「Will-Can-Must」で「今」を「輪切り」にしよう

キャリア
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今は「VUCA(ブーカ)な時代」だと言われている。

Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(不明確)の頭文字を取った言葉で、もともとは軍事用語だったようだが、現代のビジネス環境を表すキーワードにもなっている。

日本では「終身雇用」や「年功序列」といった、いわゆる「日本型雇用システム」の崩壊と歩調を合わせるように、使われるようになった言葉だ。

かつてのような「良い大学を出て、良い会社に入って、勤続年数を重ねていけば、一定以上の給与と待遇が約束されている」という「全員共通の正解」はもはや存在しない。

就職も起業も、転職も副業(複業)も、常にあらゆる可能性を選択肢に入れながら、人生を通して「自分の正解」を見つけていくことが求められている時代だとも言える。

こんな時代だからこそ、楽しみながら挑戦する人が数多くいる一方で、自分のキャリアをどう作っていけばよいか、迷っている人も多いのではないだろうか。

僕はIT企業で人材開発組織開発をしている。平たくいえば、働く人と組織をイキイキ・ワクワクさせる仕事だ。仕事柄、人のキャリアについての相談に乗ることも多い。

「キャリア」とは幅広い意味をもつキーワードだが、個人的には「自分が仕事とどう関わっていくかに答えを出していくこと」だと思っている。

よく「キャリアアップ」といった使われ方もするが、本質的には「キャリア」にアップもダウンもなく、ただただ「その人が歩んできた道のりであり、今後その人が歩んでいく道のりである」という以上のことではない。

また「今後のキャリア」といった話になると「あ、そういう意識の高いテーマは、自分には関係ないので……」という反応を示す人がいたりもするが、何かしら世の中と接点を持って生きていくうえでは、およそ「キャリア」が関係ない人というのもいないと考えている。

「キャリア」とは、より広義には「世の中とどういう関わりを持っていくか」という問いへの答えだともいえて、純粋に経済活動としての「仕事」だけでなく、例えばNPO的な活動やボランティア的な活動、さらには地域社会への参画なども、「キャリア」の重要な一部として考えられるからだ。

「自分のキャリアをどう形成していくか」というのは、とても奥深いテーマであるがゆえに、簡単に整理することはできない。ほとんどの人が自分の中でも答えを見いだせていないテーマえであるし、もっと言えば、ほとんどの人がちゃんと考えたことがないテーマであるともいえるのかもしれない。

「自分のキャリア」を紐解くには、いくつか方法があるが、大まかに分けると以下3つの方法があると思う。

1.過去の自分の仕事を棚卸しする
2.現在の自分の働き方を可視化する
3.未来の自分の仕事に思いを馳せる

これらを通して、自分と仕事の関係性を明らかにしていく必要がある。

この記事では「2.現在の自分の働き方を可視化する」の領域で、非常に使い勝手が良い、優れたフレームワークを紹介したいと思う。過去でも未来でもなく「今の自分」を紐解くための強力なツールだ。

それが「will-can-must」だ。

「will-can-must」は、3つの円を「ベン図」状にお互い重ねながら描かれる。3つの円はそれぞれ、「will」「can」「must」を表している。

「will」は「やりたいこと」だ。自分がやりたい仕事や、仕事を通して成し遂げたいことを可視化する。

「can」は「できること」の意味だ。自分の経験やスキル、資質として持ち合わせている強みなどを可視化する。

そして「must」は「やるべきこと」の意味。いま任されている仕事や、自分が使命感をもって取り組めていることを可視化する。

キャリアの研修などでは、実際にこれを紙に書き出して、「言語化」「外化(がいか)」する。そうすることで、本当の意味で「ちゃんと考えた」ことになるからだ。

まずは「will」「can」「must」の中身を書けるだけ書き出す。書きやすいところと書きにくいところ。たくさん書き出せるところと、あまり書き出せないところ。それもまた重要な情報になる。その状態こそが自分の現在地を表しているからだ。

書き出したら、今度はその3要素に書き出したものがどれくらい「リンクしているか」を見る。「やりたい」「できる」「やるべき」内容が、リンクし合っていればいるほど、今のキャリアは健全だと言えるし、逆にまったくリンクし合っていない状態は非常に不健全な状態だからだ。

「will」「can」「must」に優劣はなく、どれも十分に可視化されていることが大事だが、あえていえばやはり「will」の可視化が一番重要だと考えている。

なぜなら、「やりたいこと(will)」をやっているとき、人は一番情熱を注げるし、情熱を注いで取り組んでいるうちに「できること(can)」や「やるべき使命感(must)」は、後からでもついてくるものだからだ。

「will-can-must」は「自分の今」を「輪切り」にするツールだ。自分のキャリアという「道のり」を、スナップショットのようにスパっと切って、その断面を「何がやりたい?」「何ができる?」「何をやるべき?」という、3つの問いで分解するフレームだからだ。

自分自身が「最も変数の多い”ムービングターゲット(動く標的)”」だと考えると、「will-can-must」の内容は、時間とともにどんどん変わっていくはずだ。

だからこそ、コンスタントにたな卸しすることが重要になってくるし、極端な話、毎日でも考えてみることが大事になってくると思う。

「自分は今、やりたいことができているのか」
「自分は今、できることが十分備わっているか」
「自分は今、やっていることに使命感を持てているのか」

この3つの問いを、常に最新の自分に問い続けること。それしか、「自分のキャリア」というものを紐解く方法はないと言える。

もしかしたら「自分のキャリア」は「永遠に答えが出ないクイズ」なのかもしれない。だとしても、いや、だからこそ、こうして自らに効果的に問い続けること。その坂の上り方をするしかないのかも知れない。

人がやる気を出すパワーの源として「モチベーション」「コミットメント」「キャリア」があると、かつて上司が言っていた。

「モチベーション」は数分、「コミットメント」は数日もつが、一番やる気がもつのが「キャリア」だということだった。

「今のままでいいのかな」と思うときがきたら、ぜひ「will-can-must」で「自分のキャリアの現在地」を明らかにすることを思い出してもらえるといい。

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