ビンボー人だらけの焼き肉大会

日常を楽しむ方法
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学生時代に仲間で焼き肉をやったときの話です。

僕の大学時代のサークルは、夏になると軽井沢のホテルに泊まりこみの集団バイトに行き、その間1ヶ月ほどホッタテ小屋みたいな合宿所で寝食を共にするという一大イベントがありました。だいたい20人ぐらいが大きめの一棟建ての小屋に寝泊りする状態です。

やってることはベットメイクやら清掃やらの難しい仕事ではないし、一緒に行っている仲間も仲が良くて楽しいイベントなのですが、何しろ体験したことのない長期の集団生活、1ヶ月が終わる終盤戦には「もう少しで終わる」という高ぶりを誰もが感じていたと思います。

そんな中で迎えた最終日、なんと諸々の事情で今回は合宿に来れなかった先輩たちが差し入れと称して、肉やら野菜やらを大量に持ち込んでくれて、打ち上げの焼き肉大会を開くことになったのです。このサプライズに合宿組は大盛り上がり。

大して良い肉ではないがそれでも肉です(先輩に失礼・・)。また、合宿中は大して金もないのでカップラーメンで済ます日なんかもあったりしたこともあり、焼き始めるやいなや野菜なんか目もくれずに皆して猛然と肉を食べ始めました。

猛然と食べながらも、しばらくは仲良く和気あいあいと会が進んでいました。こんなこともあったよな、あの時はほんとどうなっちゃうかと思ったよな、と合宿中に起こったおもしろエピソードやら、ハプニングやら(これらはまた別の機会に書きますが)を話しながら食べて飲みます。

・・・と、ある時ふと気がつきました。自分が焼いていた肉が人に食べられる事件が発生したのです。

「おい、お前、その肉俺が焼いてたんだぞ」

と食べた同期に文句を言いました。僕だって普段ならそんな下品なことは言いません。ただ、この時は本当に肉が食べたかったのです。しかも名前をつけてたわけじゃくても、明らかに自分のだとわかるポジショニングで焼いていたのです。

「おお、わりいわりい」と言う同期の顔からは「へっのんびりしてるお前がマヌケなのよ」というセリフが漏れ聞こえてくるようでした。

この野郎、とさらに文句を言おうとしたその傍らで、同様の事案が他の仲間同士でも起こっているではないですか。「お前、食ってんじゃねえよ!」「あっ!ちょっ、おまっ!」と。その時からです。和気あいあいとした焼き肉大会が、裏切り、疑心暗鬼、策謀渦巻く陰惨とした戦場へと変わってしまったのは。

生肉を取って網に乗せる。乗せた箸を肉からさほど離さないところにポジショニングさせる。そうです、うかつに離せば盗っ人どもにかっさらわれるからです。会話なんてもってのほか。肉が焼けるまでの間、集中力を途切れさせなければいいだけのことです。

そんな状態なもんだから、本当はもっと焼きたいのに若干早めに食べることになります。他の奴らも同じようにしています。そうするとどうでしょう。おのおのが早め早めに食べるもんだから、全体がスピードアップする。肉を取る→網に置く→焼く→食べるの1セットがどんどん早くなっていき、その結果、全員が自分の最適な焼き加減よりもかなり早いタイミングで食べる事態になりました。

こういうのを何て言うんでしたっけ。囚人のジレンマ?(違う)

そんなわけでこの日、僕は後の人生に影響を与える大きな気づきを得た。

「ビンボー人だけで焼き肉をやってはいけない。全員生焼けを食べることになるから」

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