「洗面所のティッシュ入れ替えておいてくれたでしょ。ありがとう」
とリビングから奥さんの声がした。
日曜日の朝、僕がバルコニーで洗濯物を干しているときだった。
お礼を言われた僕は気分を良くしながら、
「そういうの『名もなき家事』っていうんだってね。いつも君がやってくれていることだからね」
と言うと、奥さんが、
「でも私は、こうしてよくお礼を言っているでしょう」
と返してきた。
少し声のトーンが変わったのを敏感に察知した僕は、
「俺はいつも心の中で『ありがとう』を言っているから」
と言うと、
「言葉にしていない『ありがとう』は意味ないから」
と言ってきた。
たしかにそうだ。
会社では仕事をしている仲間にちゃんと「ありがとう」を言っている。
子どもが何かしてくれたときには「ありがとう」と言っている。
でも、奥さんが自然に毎日してくれていることには「ありがとう」を言えていないかもしれない。
ちょっと反省。
奥さんが言うとおりだ。
言葉にしていない「ありがとう」はノーカウント。
名もなき家事と同じように、お礼も見えないままだと伝わらない。
伝えよう。
ちゃんと目に見える形で。
そんなちょっとしたことで、素敵な毎日が続いていくから。
それでは、また。
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