幻冬舎から出ている「だれのおうち?」という絵本がすごい。軽い気持ちで子どもに読み聞かせをし始めて、ラストのオチに心奪われました。
冒頭はタイトルから予想される通りの始まりです。
女の子がお散歩をしながら、
「じめんに あいた ちいさい あな いったい だれの おうちでしょう?」
「ありさんのおうち!」
という感じで動物たちの「おうち」を紹介していきます。
その後もかたつむりさんのおうち、はちさんのおうち、わんちゃんのおうち・・と続きます。
だんだんサイズが大きくなるところと、1つ前に紹介されたおうちを背景に残しているところが小気味よいリズムを生み出しています。
そして、
「あかい やねの かわいい おうち いったい だれの おうちでしょう?」
「わたしの おうち!」
動物の話から始まって人間(主人公の子ども)で終わる王道のオチ・・・と思いきや、この絵本はまだ終わりません。
「みどりの かぜふく もりのなか いったい だれの おうち でしょう?」
という問いかけに森の動物たちの絵が、
「ひろくて ふかい うみのなか いったい だれの おうち でしょう?」
という問いかけに海の生き物たちの絵が答えます。
女の子はいつのまに登場しなくなっています。
そして、ラスト。
「きらきら かがやく この ほしは いったい だれの おうちでしょう?」
えっ・・となりました。ただの感動ではない、ドキッとする感じ。そう、この最後の問いかけは子どもに対してだけでなく、読み聞かせをしている自分に対しても迫ってくるのです。
このラストの問いかけには答えが書いてありません。そのため「自分で考えなさい」という無言のメッセージになっています。
子どもに動物たちの「おうち」を楽しく教えていたら、最後は読み聞かせをしている親の方が、いま住んでいる惑星という「おうち」のことを考えさせられる。きっと作者は計算ずくなんでしょう。
そう考えると、だんだん「おうち」のサイズが大きくなるところや、1つ前に紹介した「おうち」をあえて次の絵の中に残す構成も「すべてはつながっている、皆1つの地球というおうちに住んでいるんだよ」というメッセージを送るためなんじゃないかと思います。
「きらきら かがやく この ほしは いったい だれの おうちでしょう?」
シンプルな内容の中にとても深い示唆を含んだ上質な絵本。おすすめです。
それでは、また。
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